『この前健康診断に行ったら肝機能の数値が高くなってたんです。
プロテインを飲み始めたからでしょうか。』
確かに健康診断の結果が良くないと不安になりますよね。
結果から言いますと
肝機能数値はプロテインのせいではない可能性が高いです。
タンパク質過剰摂取の問題点
タンパク質を過剰摂取した場合、体は「余分だ」と判断します。
食事から摂られた余分な糖質は脂肪に変換されて体脂肪になりますが、余分なタンパク質の場合は少し複雑で、次の3つのルートを辿ります。
① アンモニア → 尿素となって排出される
タンパク質には窒素が含まれており、体内でアンモニアに変わります。
アンモニアはカラダにとって有毒なため「尿素」に変換されます。
そして尿として排出されるのですが、このときに肝臓や腎臓に負担がかかってしまいます。
プロテインを飲みはじめると血液検査の数値が悪くなることがあるのですが、これはアンモニアが原因の一つとなっています。
② 脂肪に変換される
タンパク質(アミノ酸)は糖質に変換されたり、アセチルCoA(アセチルコエンザイムエー)に変換されます。
これらは最終的に脂肪となり、体脂肪として蓄積されます。
つまりタンパク質も、摂り過ぎると体脂肪を増やしてしまう可能性があります。
③ 他のアミノ酸に変換される
食事で摂取したアミノ酸が余ると、アミノ酸から「アミノ基」が取り出され、他のアミノ酸(特にグルタミンやアラニン)になります。
このとき、「アミノ基転移酵素」が必要となります。
アミノ基転移酵素をつくるためには「ビタミンB6」が必要となります。
そのためタンパク質の摂取量が多い場合、ビタミンB6が不足しないように留意する必要があります。
ですが、通常であればプロテインを飲んでも過剰摂取とはならないハズです。
ではなぜ肝機能数値は高くなったのでしょうか。
原因はプロテインではない
肝機能数値が高くなった原因としてプロテインを考えるのは浅はかです。
プロテインを飲みはじめたと同時にトレーニングを開始している人がほとんどだと思います。
トレーニングにより筋肉が壊れること自体が、肝機能の数値を高めてしまうのです。
AST(GOT)やALT(GPT)は肝細胞だけでなく、骨格筋にも含まれています。
クレアチニンなども同様です。
※ AST(GOT)とは
肝臓の細胞中に含まれる酵素です。肝臓の細胞が壊れると、ASTが血液中に流れ出てきて高値になります。また、ASTは心臓や筋肉、赤血球にも含まれる為、心筋梗塞や筋炎でも上昇します。
※ ALT(GPT)とは
ASTと同じく肝臓の細胞中に含まれる酵素です。肝臓の細胞が壊れると、ALTが血液中に流れ出てきて高値になります。ASTと違いALTは肝臓以外にはほとんど存在しない為、数値が高いとほぼ肝臓の障害が疑われます。
ALT(GPT)は肝臓に多く含まれ、AST(GOT)は骨格筋に多く含まれます。
そのため、ALT(GPT)が単独で高い場合は肝機能に問題がある場合も考慮する必要あります。
ビタミンB6は生体内でピリドキサルリン酸(PLP)になり、アミノ基転移反応などにおける補酵素として使われます。
つまりタンパク摂取量が多くなれば、それだけビタミンB6の必要量も増えることになります。
AST遺伝子はグルココルチコイドによって転写が誘導され、PLPはグルココルチコイド受容体と結合することにより、AST遺伝子の発現を抑制します。
つまりビタミンB6不足によりASTが上昇するのです。
プロテインを大量摂取すると、ビタミンB6が不足する可能性があり、それによりASTが上昇するということも、可能性が高いと考えられます。
