言葉は知ってるけど実際にはよくわからないという “ 抗酸化 ”
そんな “ 抗酸化 ” について考えてみたいと思います。
※内容が難しいため『抗酸化物質』の部分だけお読みいただいても大丈夫です。
活性酸素とは
抗酸化を理解するには『活性酸素とは何か』を理解しておく必要があります。
私たちは酸素がなくては生きていけません。
食事から摂取した栄養素を燃やしてエネルギーを作るのですが、燃やすということは酸化させるということで、そこに酸素は不可欠なのです。
酸化を化学的に説明すると、ほかの物質から電子を奪うことといえます。
奪った電子は、別の物質に渡していかなくてはならないのです。
酸素は1分子で4つ電子を受け取ることができるという特徴を持っています。
4つの電子を受け取ることで、酸素は水へと変換されていきます。
ところが酸素は常時使われているため、一度に4つ全ての電子が渡らないというケースが生まれてきます。
つまり、電子が足りない酸素が出てくるのですが、これを『活性酸素』と呼びます。
通常呼吸した分の2%程が活性酸素になると言われていますが、この足りない電子を埋めようとして他の物質から電子を奪い取ろうとします。
そうすることで水へと変わります。
この他にも、現代社会では過剰に活性酸素を増やしてしまう要因がいくつもあります。
・自動車の排気ガスや工場の煤煙などによる大気汚染
・食品添加物・農薬・化学肥料など
・電気製品が発する電磁波
・レントゲン撮影等による放射線
・オゾン層破壊による紫外線
・日常生活におけるストレス など
また、激しい無酸素運動などで筋肉が一時的に虚血状態になり、その後、急に血流が再開するなども要因として挙げられます。
正常な細胞がこのような理由で電子を奪われ、酸化していくと、体内は酸化的に傷ついていくことになり、様々な疾病の原因となります。
活性酸素の種類
活性酸素とは大気中の酸素よりも活性された酸素の総称で、いくつかの種類に分かれます。
◆ スーパーオキシド
エネルギー代謝の過程、ウィルスや細菌などの異物侵入時に大量に生成されます。
比較的攻撃性は弱くSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって過酸化水素と酸素へと変換されます。
◆ 過酸化水素
スーパーオキシドから変換され生成されます。
スーパーオキシドに比べ、攻撃性に関しては弱まっています。
過酸化水素は鉄イオンや銅イオンなどと反応することでヒドロオキシラジカルに変換されます。
◆ ヒドロオキシラジカル
ヒドロオキシラジカルは非常に強力な毒性があり、これを分解する酵素は体内に存在しません。
遺伝子や細胞膜を傷つけ、発がんの原因と言われていますので、それ以上連鎖反応が起きて増えないよう対策を講じなければなりません。
◆ 一重項酸素
上記の一連の活性酸素とは別に、ATP(アデノシン三リン酸)が作り出されるときに生成されます。
比較的攻撃力が強く、紫外線などの光刺激を受けるため、皮膚や目などで生成されます。
皮膚を形成しているタンパク質や脂肪を酸化、変質させます。
これらの活性酸素は不対電子をもつフリーラジカルと呼ばれるものと、不対電子を持たない非ラジカルに分けられます。
スーパーオキシドやヒドロオキシラジカルは、フリーラジカルです。
フリーラジカルの場合、不対電子をもつ不安定物質のため、他の物質から電子を奪って安定しようとします。
そして電子を奪われた他の物質が、また安定しようと他の物質から電子を奪います。
このように『フリーラジカルの増殖反応』はその攻撃が一過性に終わらず、フリーラジカルを消滅させる抗酸化物質と反応して消失しない限り、連鎖反応的に続くという問題点があります。
一方、過酸化水素や一重項酸素などは、その攻撃力とは別に攻撃が一過性であるため、比較的対処しやすい活性酸素であるといえます。
活性酸素の標的
様々な特徴を持った活性酸素ですが、最も攻撃を受けやすいのは『脂質』です。
そして細胞膜も含めた生体膜は脂質で作られているのです。
脂質は大きく分けると、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられます。
不飽和脂肪酸は化学的構造で見ると二重結合をもつ液体の脂肪酸です。
この比率が崩れると、細胞膜は柔軟性を失い硬い膜となってしまいます。
融点の低い不飽和脂肪酸、特にn-3系脂肪酸(αリノレン酸、DHA,EPA)が大切と言われる理由もここにあります。
しかし、不飽和脂肪酸の二重構造は、もっとも酸化されやすく、活性酸素の攻撃も受けやすいのです。
この場合の問題点は、連鎖反応が進んでしまうという点にあります。
二重構造部分が酸化されると、その箇所に酸素が反応してペルオキシラジカルという不対電子をもったフリーラジカルとなります。
そこが起点となって、さらに次の二重構造部分を攻撃してしまうのです。
この連鎖反応を止めないと、次々と反応が進み続けてしまうので、どこかで細胞膜のペルオキシラジカルを止めなくてはならないのです。
抗酸化物質
◆ ビタミンACE
本来抗酸化に関しては、体内でSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)をはじめとする活性酸素を除去する酵素がその役割を担っています。
しかしどの酵素も20歳辺りをピークに減少していくため、それ以外の対抗策が必要となります。
考え方としてはとてもシンプルで、活性酸素が体内を酸化する前にもっと酸化されやすい物質を体内に補っておくということです。
酸化されやすい物質こそが抗酸化物質というわけですが、その代表がビタミンA(βカロテン)、CEとなります。
これらのビタミンは非常に酸化されやすく、酸化されることにより活性酸素に電子を与え、無毒化してくれます。
それぞれのビタミンは活性酸素を除去するタイミングと場所が異なります。
水溶性のビタミンCは細胞と細胞の間の水溶性部分で働くため、活性酸素との接触タイミングが早く、一番先に活性酸素を除去できる物質です。
一方、脂溶性のビタミンA、Eは細胞内の脂溶性部分において活性酸素を除去させます。
また、ビタミンC、Eはは相互に電子のやり取りをすることで、活性酸素を除去する時間が伸びるため相性がいいビタミンでもあります。
◆ ポリフェノール
ポリフェノールとは植物が光合成をする際に作り出す物質の総称で、4000種類以上もあります。
ポリフェノールは両親媒性の為、細胞の内外で抗酸化物質として働きます。その種類によって水溶性部分が多く吸収時間が速いものと、脂溶性部分が多く時間をかけて活性酸素を除去するものがあるため、そのタイムラグを利用することも可能となります。
◆ αリポ酸
αリポ酸は生体内で生成される補酵素の一つです。
補酵素という点ではビタミン同様の役割ですが、合成されるという点においてビタミンとは区別されています。
αリポ酸は解糖系において、ピルビン酸がアセチルコリンエステラーゼに返還される際の酵素(ピルビン酸デヒドロゲナーゼ) の補酵素として働くため、エネルギー産生においては大変重要な役割を担います。
このαリポ酸は抗酸化力が強いという特徴があり、ほぼすべての活性酸素に対してビタミンC、Eの400倍とされています。
さらに、強い抗酸化力と共に、生体内で酸化されたビタミンC、Eを再活化させるという働きももっています。
生体内で合成されるものの、その合成能力は活性酸素除去酵素と同様に加齢により減少していきますので、外からの摂取を意識した方が良さそうです。
◆ アスタキサンチン
アスタキサンチンもαリポ酸に劣らず強い抗酸化力を持っています。
アスタキサンチンとはカロテノイドという赤、黄、橙色の脂溶性色素の一種で、ヘマトコッカスという藻をエビ、カニ、鮭などがエサとするため、それぞれの赤色の成分が含まれるようになります。
化学構造的にもβカロテンによく似ていますが、それよりさらに強い抗酸化力を持ちます。
特徴的なのは、その抗酸化力を発揮するのがミトコンドリア内の電子伝達系という点です。
電子伝達系では、一部の電子が酸素と反応してエネルギーを作り出すと同時に活性酸素も生じてしまいます。
アスタキサンチンは、その起点となっている一重項酸素を消去する能力に優れていることから、特に持久系の運動や激しい運動に対して効果的な素材であるといえます。
◆ 還元型コエンザイムQ10
もう一つ電子伝達系の抗酸化に重要な役割を担っているのが、還元型コエンザイムQ10です。
電子伝達系で電子を受け渡すと同時に、還元型の場合は抗酸化という機能も持ち合わせています。
細胞膜の抗酸化に強い機能を発揮するのが脂溶性のビタミンEなのですが、ビタミンEは細胞膜を守るために酸化されると、ビタミンEラジカルという物質に変化してしまいます。
そしてビタミンEラジカルは脂質の酸化を進めてしまいます。
このときビタミンEラジカルを還元し、元のビタミンEに戻してくれるのが還元型コエンザイムQ10とビタミンCです。
抗酸化は健康やスポーツパフォーマンス向上に必要不可欠である。まとめ
◆ 還元型コエンザイムQ10
◆ ビタミンC
◆ ビタミンE
上記3つが電子伝達系の抗酸化に関しては最強の組み合わせといえるかもしれません。
